5月 19th, 2008
先月、Christian Schwartzさんの会合でお会いしたIan LynamさんからParallel Strokesという本を送っていただいた。以前彼はPingMagで小林章さんにインタビューを行い、それを見て以来ずっとインタビュアーのIanさんのことが気になっていたが、まさか日本に住んでおられるとは思っていなかった。先日の会合では会の終わりに少し挨拶をさせていただいただけだったので、メールで少しやり取りをさせていただいていた。
このParallel Strokesには彼がタイプデザイナーや、文字に関わるアーティストにインタビューした記事がまとめられている。一口に文字と言っても文字をメインにした落書きアーティストから書体デザイナーとさまざま。文字をテーマにしていろいろな人が活躍しているんだなと思った。それぞれの活動内容や、なぜ文字に興味を持ち始めたかなど各者さまざまでとてもおもしろい。いろいろなきっかけがあるのだなと思った。
Parralel Strokesと一緒に送っていただいたノベルティ
小林さんのインタビュー記事もかなりの部分がカットされていたのか、PingMagには掲載されていなかった質問項目やスケッチなどが掲載されている。その他にはUnderwareへのインタビューや以前IanさんがFontShopカタログで記事を掲載した号の写真を見てとても好きになったDAIMへのインタビューなどが含まれている。
(左上) Parallel Strokesのポスター (右下) 掲載アーティストの写真を見て思い出したIanさんの記事が掲載されたFontShopのカタログ005。表紙を飾るのはDAIMのアート。
Ianさんはグラフィックデザイナーとしてだけでなく、CooperBlack Swashをデジタル化した方でもある。自身でレーベルも立ち上げているようだ。いろいろとお伺いしたいこともあるので、一度会いませんかと約束をした。
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5月 12th, 2008
Linotype社がFrutiger Serifを発表。Frutiger SerifはAdrian Frutiger氏がデザインした代表的セリフ書体Meridienを改刻したものだ。尖ったセリフを持ちながらなぜか柔らかい印象を受けるMeridien。次に改刻してほしい書体の一つだった。よくHelveticaやUniversのセリフ書体があったらと想像してみるが、それにセリフをつけるだけでいいというふうに簡単にはいかない。Palatinoは新書体としてSans Serifファミリーが加わったが、FrutigerにはMeridienを改刻させて(Meridienの名前が残らなかったのが少し残念だけど)Serifファミリーとした。字幅やウエイト、プロポーションをFrutiger Nextに合わせて設計され、Sans Serif(Frutiger Next)とSerifの相性がさらによくなるようになっているそうだ。小サイズでの使用時の読みやすさも見直されて、Frutigerファミリーとして頼もしい相棒が加わった。
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4月 30th, 2008
国宝好きにはたまらない大忙しなゴールデンウィーク。新薬師寺に引き続き、東京国立博物館の「国宝 薬師寺展」に出かけた。「新」がつくつかないは決して新旧の関係にあるわけではなく、「新」には別の意味があるそうだ。仏像の中でも日光/月光、仁王像のような対となるものや、四天王像、十二神将像など複数で世界をなすものが好きで、今回も日光/月光菩薩立像が間近で見ることができるということで楽しみにしていた。
もともと仏像は安置されているお寺で見るのが一番良いと思っているが、美術館での展示の楽しみは、お寺では見ることができない角度から見ることができるのがおもしろいこと。今展では室内にデッキが設けられ、ほぼ真正面から見ることができる工夫がされている。
十二神将像ではないが仏像は十二方位から見るとかっこいいという勝手な持論があり、ぐるりと回りながらお気に入りの角度を見つける。体をS字にくねらせているので、どんどんと動きが加わり姿勢が変化していく。一番よかったのは背中からの角度で、黒いつややかな色と体の動きが相まってとても艶かしい。
作品数が少ない分、吉祥天女像をはじめ国宝、重要文化財に絞られていてとても中身の濃い展覧会。一方で展示期間中、当の薬師寺には日光/月光の写真が飾ってあると友達にきいた。あの大きなお堂に薬師如来が留守を預かっているのかと想像すると、少し寂しい気がする。やっぱり、全てが揃った状態で薬師寺でみるのが一番ありがたいのかな。
東洋館では「蘭亭序」の展示があった。王羲之の真跡は存在せず、さまざまに臨模したものが伝えられているとのことだが、本当にいろいろな書風でのこされていて、奔放に書かれたものもあったのが意外だった。会期の終了が迫っていたので、本当はこちらが目的であったにもかかわらず、「薬師寺展」でかなり疲れ果ててしまい、集中力が続かなかった。美術展の掛け持ちはよくない。7月からは江戸東京博物館でも「北京故宮 書の名宝展」として「蘭亭序」も出品されるそうです。
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4月 22nd, 2008
松寿堂をあとにして、少し早歩きで新薬師寺へ。一番気温が高い時間にさしかかり、だんだんと汗ばんでくる。蕾が膨らみ始めた藤の花を見ながら近道らしき小道を抜け、少し高台となったところに出ると、ひっそりと「新薬師寺」がある。思っていたよりも小さい。
お堂は正面が閉ざされていて妻側から中に入ると、薬師如来を中心に周囲を囲むように十二神将像が立っていた。いつもの通り本尊に手を合わせてから見るのを忘れて、いきなり十二神将から見始めてしまった。ついつい気がはやる。
パンフレットの表紙を飾る「婆娑羅神」は主人公たる風貌を持っていて、とてもかっこいい。日本の漫画やアニメは仏像に影響を受けているものが多いというか、脈々と流れているというか、この婆娑羅神は大友克洋のAKIRAを思い起こさせるし、東大寺大仏殿の四天王像はガンダムを感じさせる。十二神将はそれぞれの表情の違いがキャラクターを感じさせるところが好きな理由なのだろうかと思う。
全て丁寧に見てから自分の干支の神に手を合わせたがここで大失態。干支の亥ではなく自分の星座の牡牛座とこんがらがって、丑の神に手を合わせてしまった。神将に見抜かれたのか、睨まれている気がした。
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4月 21st, 2008
大阪への出張のおりに訪れた奈良は新緑の季節で天気も良くとても気持ちよかった。
お目当ては新薬師寺の十二神将像。仏像マニアの心をくすぐる国宝である。奈良中心街の寺社にはほとんど行っていたが、新薬師寺だけは少し離れたところにあるので、まだ行けていなかった。
JR奈良駅でたまたま手に取った観光ガイドの墨の写真に目が留まり、新薬師寺への途中にあるようなので行ってみることにした。これまでは近鉄電車を使うことが多かったが、最近になって実家の最寄りから奈良へのJRの直通電車が開通したので初めてJR奈良駅で降りてみたが、こちらの方が町並みも古く風情があって発見も多かった。
駅から10分程でガイドに紹介されていた「松寿堂:しょうじゅどう」に着いたが、いざ外観を見ると高級そうな老舗に思えてしばらく入るのをためらった。しかし、せっかく来たんだしと思い切って入るとご主人と奥様がとても気さくに出迎えてくださりほっとする。
屋内も純和風の設えで、土間からの上がり口(この部分をなんて言うんだっけ?)に墨がきれいに並べられていた。ちょうど向かいにある階段状の箪笥が印象的で、落ち着いたとても素敵な雰囲気だ。
ご主人に一つ一つ商品を見せていただきながら、墨の作り方やお店の歴史などをうかがった。なんでも、室町時代頃から奈良の興福寺のお坊さんが写経をするのに墨を大量に必要としたのが始まりだそうで、「奈良墨」と呼ばれるそうだ。以前は多くの墨屋さんがあったらしいが、墨は公害の原因ともなるため敬遠されたこともあり、今ではこの町内にあるのは松寿堂さんだけになってしまったらしい。
その他にも梨の木で作られたという墨の押し型もわざわざ奥から出してくださり、とても細かい龍の柄について丁寧に解説していただけた。文字を凸にした木型もあり、木活字のようだった。
以前見たヘルマン・ツァップさんの短編映画 “The Art of Hermann Zapf” で墨を摺っていたことを思い出し、東洋だけでなく西洋のカリグラファーも墨をインクとして使っていることをご主人に話すと、「今度からその話を使わせてもらいます。」とうれしそうに話されていた。
鹿の形をしたかわいい墨を2つ購入。きれいな桐箱に入ってインテリアとして置いても良いなと思う。もっとじっくりお話をお聞きしたかったが、残念ながら新薬師寺の閉門時間が早いのでおいとますることにした。もう一度来てゆっくりお話をお伺いできたらと思う。
(上) 新薬師寺からの帰りに見つけたもう一つの墨屋さん「古梅園:こばいえん」の看板と暖簾。 (右下) 墨という文字がシンボリックでかっこいい。
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4月 12th, 2008
銀座gggで開催中のTDC展に行く。先日Schwartzさんのプレゼンテーションでお会いした現在イギリスReadingの学生であるFernando De Mello Vargasさんの作品を見てみたかったからだ。見事TDC賞を受賞したFridaという書体は標準的な欧文だけでなくタミル語というインドで使われる言語もカバーしているそうだ。
VargasさんとはTDC賞授賞式翌日に開かれたSchwartzさんのプレゼンテーションでたまたまお会いしたが、終電間際だったこともありゆっくり話を聞くことができなかったので、メールを送ってやり取りをしている。Reading大学での論文などもサイト上に公開してあり、スペーシングについての研究など、とても興味深く読ませてもらった。学生でありながら既にこのレベルの作品と論文を手がけたということに恐れ入る。
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4月 8th, 2008
まさかこの方に日本で会うことができるとは思ってなかった。五反田の5tanda Sonicで開かれたTokyo Art Beatのトークショーには、ニューヨークを拠点にするタイプデザイナーChristian Schwartzさんをゲストに迎え、大雨にも関わらず多くの人が詰めかけたいた。
I Love New York Tシャツを着て壇上に上がったSchwartzさんは、たくさんのスライドとともに、手がけてきたカスタムフォントの事例を紹介。特にイギリスの新聞The Guardian用のカスタムフォントの経緯を詳細に語ってくれた。100を越す膨大なファミリーになった理由や、それぞれのファミリーの持つ役割などを解説し、カスタムフォントを作る意味が感じられた。
ショーのあとで懇親会が開かれ、少しお話をすることができた。ポートフォリオを見てもらって意見をもらったり、質問をしてみた。Schwartzさんも見出し用の太い書体が好きなようで、丁寧に見ていただくことができた。Guardian書体は今年中に発売予定だそうで、コンデンス書体も現在進行中とのこと。
(左) 3スタイルある書体について解説。 (右) この日のために用意されたプロフィールなどが掲載されたフリーペーパーにサインしてもらう。
このショーの数日後には朗文堂でも同様のプレゼンテーションが行われ、厚かましくまたお邪魔した。先日できなかった質問を伺うことができ、オランダの書体に影響を受けた理由や、カスタムフォントを導入する際のクライアントの理解度についての意見をお聞きした。
日本でカスタムフォントが普及しないのは決して文字数の多さだけが原因ではないと思う。まだまだ作り手がその効果、利点をうまく説明できていないという思いが強くなった。
日本で海外のタイプデザイナーに直接お話を聞くチャンスはほとんどない。Schwartzさんは明日が帰国というのに二回目の時間を作ってくださったそうで、二回も会うことができ、たくさん質問させていただいてとても感謝しています。
もう一人、お礼を申し上げなければならない方がいます。今回のTABのトークショーをコーディネートされたAQのChris Palmieriさん。タイプデザインにとても興味があるそうで、ご自身のサイトでJeremy Tankard氏など最近注目しているタイプデザイナーにインタビューをしており、Schwartzさんの通訳としても尽力され、とても親切にしてくださいました。ありがとうございました。
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4月 5th, 2008
嘉瑞工房さんがWEBサイトのリニューアルを行った。書体見本に加え金属活字の写真も添えられている。活版印刷の基礎知識というコーナーも近々開設されるようで楽しみだ。
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4月 3rd, 2008
西武鉄道が新しいサインシステムを実施し、主要書体としてAXISフォントを採用しています。
サインが置き換わっていることは少し前から気がついていたのだが、いつも乗り降りする練馬高野台駅に設置されてようやくAXIS Fontだと気がついた。漢字を見分けることが難しいため、ひらがなの「た」を見てようやく気がついた。
ウエイトはRのようで、欧文書体はHelvetica。路線図も同じ組み合わせ。路線図のJRだけはAXISの欧文だったのがおもしろかった。現在順次全ての新デザイン表示物に置き換えていくようだ。書体にとってサイン書体に採用されるというのは、採用事例として格別な気がする。デザインが合う合わない以外に、機能性が備わっているかどうかも考慮されているに違いないからだ。自分もいつか鉄道用の書体を作ってみたいと思う。
知る限りでは、AXIS Fontが鉄道サイン用書体として採用されるのは肥薩おれんじ鉄道をはじめ2例目だと思います。
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4月 1st, 2008
本日よりブログを開始。どのシステムが良いのかわからず、とりあえずWordPressを採用。思ったよりも簡単に作れたが、決して凝ったものにはできていないので、これから充実させるのにかなりたくさんのことをしなければならないはずだ。あまり気張りすぎると続かないということを自分でよくわかっているので、始めること、続けることを大切にしたい。と言いながら、4月1日にスタートさせるのは、続かなかったときにエイプリルフールだったと言い訳できるようにするため。
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