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孫明遠氏講演会

金曜日, 9月 5th, 2008

「こんなにたくさん楷書体というのはあるもんなんか。」次々とスライドに映る楷書体はどれも姿勢が美しく、中国の楷書体に対する執着と歴史を感じることができた。

20世紀前半期、中国人による「倣宋体・楷書体」の開発と「明朝体」の受容』という講演を聴きにいった。韓国同様お隣の国である中国の書体事情もなかなか知る機会が無く、こういう講演を通して少しでも事情をつかめればと思い参加した。

徹底した研究が行われたようで、豊富な資料とともに日本との関係も含めながら解説が行われたが、半世紀を約2時間で振り返り全て憶えきることも難しく、内容を把握するには同時に配布された資料での復習が必要になった。貴重な講演だったにも関わらず、一番強く残った印象が冒頭の感想だったというのはお恥ずかしい限りだが、繰り出されるスライドの書体一つ一つに個性があって、柔らかい印象のものから端正で凛々しいものまであり見とれてしまった。

一方で中華人民共和国時代に入ってから急に質が変わったこともおもしろい。時代の変化がデザインにもたらす影響は大きかったのかなとも感じたが、書体の変化は制作上の制約や印刷媒体への適応によるところが大きいことも多く、想像だけで思い込まないようにしておこうと思う。最新の中国書体デザインも興味深く、とにかく文字に関しては歴史の深い国だから、今回見ることができた楷書体の素養を背景にして、伝統的な書体をはじめ今後の新しい展開も期待させる。

またもうひとつ興味深かったのは、長体、扁体といった正方形ではない書体も多く作られていて、当たり前に使われていたことが伺えたこと。孫氏が最後に紹介した言葉「温故知新」を違う角度から自分に響かせて、これからのことを想像してみるのが面白かった。

△:講演会の案内と当日配布された資料。

講演関連記事:アイデア327 [論文]中国におけるグラフィックデザインとタイポグラフィの歴史的発展に関する研究 1805-1949 文:孫明遠

朗文堂News09 September 2008