活字鋳造体験会
土曜日, 7月 12th, 200812時48分京急電鉄南太田駅。今年の梅雨はどこへやら。「築地活字」が催す活字鋳造体験会に参加するため、金属どころか自分も溶けてしまうような真夏のような日差しを浴びて、地図を片手に横浜市南区にある目的地へ向かう。
△左:築地活字。右:整然と並んだ6台の活字鋳造機
工場のような建物をイメージして来たが、活字棚の木目を基調にしたショールームのようなきれいな室内に驚かされる。印刷所や鋳造工場ともなると汚れても仕方がない格好をしてきたが、そんな心配はなさそうだ。明るい室内の右手には活字が収められた棚が並び、左手には6台の鋳造機が整然と並んでいる。自由に出して見てもよいとのことで、カメラを片手に拝見させていただいた。参加者がだいたい揃った所で体験会は室内の説明から始まる。代表の平工さんに概要を伺い、続いて職人の大松さんから鋳造行程について解説していただいた。
△左:活字の棚について説明してくださった築地活字代表平工さん。右:鋳造行程について解説してくださった大松さん
△左:活字棚に収められた活字。右:母型棚に収められた電胎母型
△左:八光自動活字製造機。右:右から左へ徐々に細くなる回転軸をベルトで繋ぐことによって活字鋳造機のスピードを変化させることができる。
△左:鋳造用の地金。原料は鉛・アンチモン・錫などで主に中国などからの輸入。右:溶解温度は約350〜400度くらい。真夏のこの時期は温度の調節が難しく、しかも室内はかなり温度が高い。入れるとすぐに溶ける。
△左:母型をセットする大松さん。右:参加者一人一人が名前の一字を鋳造操作することができる。うまく真ん中にあわせないと文字がずれてしまい使い物にならない。ちょうど収まったと思っても大松さんの目にはずれがすぐにわかり修正してもらった。
△左:出来上がったばかりの活字。大松さんは平気で持っていたが、実はかなり熱く思わず落としそうになる。右:築地活字の見本帳用に用意されている組版。
金属活字の説明をしながら、当時の事情を解説いただくにつれ、話はだんだんと昔話へ。金属活字が主流だった頃、一字足りないから作ってくれと夜中でも起こされたそうで、24時間365日休める日がなかったぐらいだそうだ。全員で慰安旅行にも行けることが無く誰かが留守番をしていなければならなかったそうである。これまで大松さんが携わってこられたさまざまな担当でのエピソードが面白かった。
最後に参加者の一人で、かつて印刷所を営んでいた方が持参されたライノタイプの金属活字や、およそ1cm角の中に49もの文字がある金属活字などを見せていただいて、活字鋳造体験会は終わる。
写植さえ知らない世代は金属活字などさらになじみが無い。しかし、最近は金属活字が特集される雑誌も多く、凸版ならではの仕上がりの風合いを求めて、若いデザイナーからの発注も多いそうだ。
△左:指先より小さい中に49文字が入った活字。母型はベントン彫刻機で製作されたものだそうだ。右:大型金属活字とその解説シート。
△:Linotype機で作られた活字。
△:お土産としていただいた宋朝体の活字。「彦」を鋳造体験した。
たまたまネットで見つけた活字鋳造体験会。不定期のようだが時々催されているようで、これからも体験できる機会はありそうだ。