Archive for 1月, 2009

「世田谷で見かけた書体」展とトークイベント

日曜日, 1月 18th, 2009

 —タイプハンターは一瞬で文字を捕らえる。発達した嗅覚ならぬ「字覚」は街に潜む様々な文字を見逃さない。一度狙いを付けたら文字の裏の裏まで、果ては文字を掲げる店の中まで入り込み味わい尽くす。—

14時45分東急田園都市線三軒茶屋駅。「世田谷で見かけた書体」展と作者の竹下直幸さんのトークイベントを見るために、世田谷文化生活情報センター「生活工房」に向かう。書体デザイナーである竹下直幸さんは、ご自身の書体のみでなく、街で見かけた文字を書体名とともに一つ一つ解説したブログが注目された方だ。『街で見かけた書体』と題されたブログは、書体デザイナーとしての職業柄あらゆる書体に精通した竹下さんが、独自の視点で街角の文字を捉え、ユーモアのあるコメントが添えられた、更新をいつも楽しみにしていたブログだった。2006年の一年間限定だったブログが休止した以後も、引き続きいろいろな街に繰り出し見かけた書体を、雑誌やトークショーで紹介されている。今回、世田谷区に地域を限定し、その中で見かけた書体を展覧会としてまとめ、その活動の詳細をトークイベントで紹介してくださった。

この企画は、生活工房でキュレーションを努める長谷川さんが竹下さんのブログに注目し、生活工房のある世田谷区を取り上げて欲しいと打診をしたのが発端だそうだ。この企画のために、すでに昨年8月頃から取材は始まり、世田谷区をくまなく巡って撮影された相当数の写真から厳選され展覧会として構成された。併せて展覧会が始まる前の昨年末から、「世田谷で見かけた書体」と題してかつてのようにブログも展開されて、企画を盛り上げていた。

トークイベントは2部構成で、前半は、看板、商店街、道路、公共、鉄道といった分野に括って紹介され、後半は番外編として竹下さんが特に気になったものが紹介された。商店街の看板から、広告、標識、果ては地面に埋め込まれた「道界」と呼ばれるものまで、街に何気なく存在する書体も、竹下さんのフィルターにかかれば急に活き活きして見えてくる。竹下さんが特に注目したという街角に設置されている「消火器」に表記された文字についての話を聞くと、大げさなではなく、防災に対する行政の姿勢、取り組みまでが見えてくる気がした。

△左:竹下直幸氏。右:取材中に使われた世田谷区の地図を紹介する長谷川氏。酷使されボロボロになってしまったそうだ。

番外編では、より竹下さんならではの視点で気になったことが取り上げられ、特定のモノに注目したり、書体ではないロゴや、時には脱線して探索中に食べた世田谷のうまいものまでに話が及んだ。その脱線が独自の視点につながり、真正面に見ていては見えないことも浮き彫りになってしまう。事前の調査無く街を練り歩き、本能にまかせて文字を嗅ぎ付けるように行動する様子は、冒頭に書いたように、まさに文字を捕らえるハンターをイメージさせるのだ。看板が気になったお店は中に入って食事もしてしまうが、うまいものを紹介するだけでなく、看板の文字とその店の料理が関連づけられて、あーなるほどと思えてくる。文字を探し求めるだけでどんどん街の姿が見えてくるのがとても面白かった。

質疑応答で、世田谷という限定の地域を巡ることで、他の地域との違いや世田谷ならではの特徴がありましたかと質問してみたところ、そういう特徴が浮き出てくることを期待していたが、書体の使い方や傾向などは残念ながら特になかったそうだ。ただ、行政の看板の設置の仕方や表記には隣接する区で違いが見えたり、他の地域に住む人だからこそ気がつくこともあったという。

△左:展覧会場。右:展覧会DMとトークショーで配られた展覧会用特製チロルチョコ。世田谷区の道界がモチーフになっている。

この展覧会で世田谷を取り上げたことで、他の22区への展開を期待する声もあるそうだ。とはいえ、この世田谷を巡るだけでも相当な奮闘ぶりが伺え、さりげなく紹介してくださる裏には、決して「たまたま見かけた」ということでは収まらない行動力が想像でき、簡単にいろんなところでできるものではなさそうだ。他の22区もという期待は欲張り過ぎとして、またどこかの地域で竹下さんが見かけた書体を紹介していただける機会を楽しみにしたい。

展覧会は世田谷区三軒茶屋の世田谷文化生活情報センター 生活工房ギャラリーにて2009年2月1日まで開催されています。

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2009年も宜しくお願いいたします。

金曜日, 1月 16th, 2009

2009年もはや半月が過ぎる。遅ればせながら今年も宜しくお願いいたします。今年はサイトを少し拡充したいという思いもありつつ、時間を決めてしっかりやらないと、いつまでたっても進みそうになく…。昨年から行っている富岡八幡宮へしっかりとお参りをして、目標に向かってコツコツとまいります。今年はどんな文字の出来事と出会いがあるのかと楽しみにしつつ。