Archive for the ‘Event’ Category

大曲都市さんタイプデザインセミナー

月曜日, 1月 16th, 2012

武蔵野美術大学を卒業後、2011年に英国レディング大学書体デザインコースを修了し、現在英国Monotype社契約デザイナー、フリーランスデザイナーとして英国で活動されている、大曲都市(おおまがり とし:@Tosche_J)さんが一時帰国されることになり、急遽お話をしていただく企画をしました。お茶を飲みながら豊富な写真とともにスライドショートークをしていただく予定です。間際のご案内になりましたが、なかなか無い機会ですのでぜひご参加下さい!

大曲さんがレディング大学でデザインした欧文書体「Marco」の見本帳が右列三段目にあります。
http://www.typefacedesign.org/2011/
Marcoはセリフ、サンセリフ、ギリシャ、キリル、モンゴル語までカバーしたスーパーファミリーで、大曲さんはモンゴルまで取材に行かれたそうです。海外のタイプコンファレンスでもスピーカーとして話されています。

■日時
2012年1月21日(土)18:30~20:30

■場所
喫茶室ルノアール マイスペース 新宿区役所横店5号室
東京都新宿区歌舞伎町1-3-5 相模ビル1階
<地図>http://www.ginza-renoir.co.jp/renoir/006.htm

■セミナー会費
1000円+各自飲み物を一品オーダーしていただきます。
(申し訳ございませんが、有志企画のため領収書等はお出しできません。)

■懇親会
セミナー終了後、近くで懇親会を行います。割り勘です!

店名:台湾料理「青葉」
電話:03-3200-5585
日時:1月21日 (土) 21時~

http://r.gnavi.co.jp/g577400/map/

「懇親会を予定している台湾料理店のしじみのしょう油漬けは絶品です。」by タイプデザインセミナー宴会部長

■お申し込み<受付は終了いたしました。>
メールにて、okanobu.seminar(at)gmail.comまで、件名に「【大曲都市氏タイプセミナー申込】」として下記事項を記入の上、お申し込みください。

※記入事項
氏名、連絡先(電話)、複数名応募の場合は同伴者人数を明記、懇親会参加有無(複数参加の場合は人数)
(頂いた個人情報はセミナー連絡用のみに使用し、終了後破棄いたします。)

先着順に折り返し手動メールで返信させていただきます。<受付は終了いたしました。>

あいにく多摩美術大学美術館にてエリック・ギルをテーマにした講演会と同日となりましたが、こちらもよろしくお願いいたします!

■担当:岡野邦彦(@Shotype_JP)

ATypI Dublin 2010 / Main Conference(2)

日曜日, 9月 12th, 2010

ATypIのメインイベントは開催期間中の後半3日間、場所をダブリン城に変えて行われます。こちらの会場は2つのホールに別れていて、大きい方が400人ほど入るホールで、もう一つが100人くらい。Robert Bringhurstの基調講演に始まり3日間で65ほどのプログラムが行われます。Marian BantjesやUnderwareの講演など見所は満載。こちらでも昼食時にいろいろな方と隣り合わせになり、話をする機会がある。また夜にはNational Print Museumへの見学ツアーもあり、古い印刷機や活字鋳造機をデモンストレーションしてもらい見ることができた。

休憩の合間には、近くにあるトリニティーカレッジ博物館に展示されているケルズの書を見に行ったり、街を散策して歩いてみたり、裏にある美術館で古今東西の写本を見たり文字にどっぷりと浸れる5日間にできる。時間の都合で参加できなかったが、街の中の看板や碑文を見て歩くタイプウォークツアーもあったり5日間の間にたくさんのプログラムが行われる。そして最後の晩には、アイルランド、ダブリンと言えばギネスビール。醸造工場にあるレストランで親睦会が行われた。

左:メイン会場のあるダブリン城。右:敷地内にある建物にメイン会場が設定された。

左:メインホールは約400人程の収容。右:第二会場は100人程が入ることができる。

左:Dan RaynoldsはKlingspor foundryとVictor Hammerの書体について。右:Jean François PorchezとCiaran Ogaoraとの対談。

左:Erik Spiekermann, David Berlowなどがパネリストとなったディスカッション。右:UnderwareのBas Jacobsは最新作Book of war, mortification and loveなどを披露。


左上:National Print Museumへ見学ツアー。右上:National Print Museum建物外観。
左下:ライノタイプ機で活字鋳造のデモンストレーション。名前を鋳造してもらうことができた。 右下:参加者でにぎわう館内。所狭しと数々の古い印刷機、鋳造機が並ぶ。ほとんどが動態保存されていて、引退した職人がデモンストレーションをしてくれた。参加者の目が熱い。

左:会場裏手にあるChester Beatty Library。古今東西の聖典が展示されていた。右:アイルランドの国宝とされている8世紀頃に制作された写本聖書、Book of Kellsを見にTrinity College Museumへ。美しい装飾が施されたケルティック文様がとても美しい。

街の主要な移動手段はトラムとダブルデッカー。ここのトラムは最新式でとてもカッコいい。ハーグはトラムの方が多いがここダブリンはダブルデッカーが沢山走っている。

左:Timothy Donaldsonはカリグラフィーパフォーマンスを3日間ずっと行っていた。右:会場内ロビーには書籍展示やTDC2の受賞作品が展示されていた。コーヒーブレークにはここで皆が歓談。

左:休憩時間を使って近くの教会、Christ Churchへ。ステンドグラスが美しい。右:たまたま聖歌隊が練習に来ていて美声を楽しませてもらった。教会で聞くハーモニーは自然のエコーがかかって鳥肌が立つ。



見たいプレゼンテーションは沢山あるが、一日中会場で座っているのもしんどいので、たまに街を散策する。いろいろな看板やサインを見るのもおもしろかった。

左:夜には参加者とバーに行って飲むことも。右:いろいろな話題が弾んで夜遅くまで楽しい時間が続く。

アイルランド、ダブリンと言えばギネスビール。最終夜は、醸造工場にあるレストランで懇親パーティが行われた。ギネスビールをたっぷり味わってとても賑やかなパーティーになった。

残念ながら翌日から学校が始まる(既に学校は始まっているのを休んで来た)のでフライトの関係で麥倉さんとKOKINさんのプレゼンテーションを見ることができず帰らなければならなかったのが残念。日本の書体事情やタイポグラフィーをテーマにした講演がどういう反応になるかも知りたかった。今後ももっと日本語をテーマにしたプレゼンテーションが増えて行くと面白いと思う。いつかテーマを見つけてプレゼンテーションしてみたいとも思うが、何年先になるやら。

次回ATypIは2011年9月にアイスランド、レイキャビクで予定されています。その次の候補地もアナウンスされていて、アルメニア、エレバンが候補地になっています。

第21回出版UD研究会「書体の作り方・選び方」

土曜日, 7月 25th, 2009

頂きに雪をたたえる鳥海山(ちょうかいざん)と麓に広がる田園風景。米どころ山形の写真から講演会は始まった。アカデミー賞で話題となった「おくりびと」の舞台にもなったそうだ。そんな美しい風景が広がりまだまだ自然が豊かな所で鳥海さんは育った。多摩美術大学在学中に訪問した毎日新聞社で書体を制作していた小塚昌彦さんに、「文字は日本人にとって水であり米であり」という言葉を聞いて文字を作る仕事に就こうと決めた鳥海さん。水と米が豊かな鳥海山の麓で育った鳥海さんにとって、この言葉はとても響いたのかもしれない。

左:会場となった東京・高田馬場にある日本点字図書館。右:大きなプロジェクターを使って説明する鳥海氏。60名以上の参加者が集まった。

第21回出版UD研究会は「書体の作り方・選び方」と題され、有限会社字游工房社長で書体設計士の鳥海修氏を講師に迎え、書籍や印刷物に使う書体を見分けたり、選ぶためのてがかりについて語るというもの。前半は日本の文字表記の特徴に始まり、中国、日本の4000年の文字の歴史を駆け足で巡って文字の成り立ちを学んだ後、「本文書体についてのややこしいはなし」として本文用書体の見分け方や、書体の選択方法についての解説がなされた。

明治以降、書物を通して自然に読ませ伝えて来た本文書体の存在は、文化の礎になっていると思うと語る鳥海さん。書体の中でも本文書体は一番重要なもので、なるべく長く使われる良いものを作っていきたいと話す。そして書体には品格があるときっぱりと言う。以前の講演会で写研の石井明朝で9割近い人が品格を感じるとしたことを例にとり、それだけの人が感じるということは品格があるということで、書体を作る際にはそう言うことも考えなければいけないと話した。最近発表が相次ぐUD書体についても、実際の使用例を紹介しながら、その書体がふさわしい場面かを使う側が考えることも重要で、UD書体だからといって踊らされること無く使って欲しいと思うと話された。

書体の見極め方となるポイントを、書体を比較しながら提示したというのは大きいと思う。漢字の画数の多少で現れる黒みの問題など、言われないと気がつかないようなことにも、字游工房でデザインされた書体は調整されていて、本文用書体ならではの細やかな配慮がなされたデザインとなっている。一見みんな同じように思える明朝体も、並べてみるとその違いはよくわかった。プロジェクターでの例示のように、本文用書体は大きな面積で組んでみることも重要で、市販されている総合見本帳の面積では気がつかないことも多いのではないかと感じた。

休憩を挟んでの後半は、つい先日発表になった鳥海さんがデザインをした株式会社キャップスオリジナル仮名書体プロジェクト「文麗(ぶんれい)」「蒼穹(そうきゅう)」についてと書体制作実演だった。

このプロジェクトはキャップス社より依頼を受け始まった。文麗仮名は文学書、とくに近代文学などを想定して作られ、蒼穹仮名は外国文学など翻訳書などに適するように、頻出するカタカナにこだわりを持って作った書体だそうだ。今までに無いようなやり方で作ったというこの書体は、制作にあたり夏目漱石の「こころ」を何十年ぶりかに読んでイメージを膨らませたそうで、一つ一つの文字を丁寧に読ませたいという思いが強くなり、思いやりを持ったデザインをしたいと取り組んだそうだ。

まず2cmの大きさに鉛筆で骨格を描き、筆の動きをイメージしながら筆で一発で下図を制作した。筆で一発で描いたことで、鉛筆による下書きでは出しにくい、ひらがな特有の筆の動きがうまく得られたようだ。

左:20mmの大きさに描かれた下図。右:その後48mmに拡大して修正された下図。これをスキャンしてデジタル化する。

文字の下図を書いている時は「自分は天才かと思った。」「こんな『か』は俺しか描けない。」と思うほど、どんどんとうまく書けていたのに、いざデジタルに落とし込んで組んでみると「だめなんですよねぇ」とがっかりしたという。組みながら修正を繰り返し8回目の試作でようやく形がまとまってきたそうで、最終的には13回もの修正を繰り返えして完成させたらしい。自分ではとてもうまく書けたと思った「か」は、最終形では一番初期のものから変わってしまったそうで、「あまりに筆で描いたもののようにリアルすぎた」ことが「活字として見た時の感じが出てない」ということだった。このあたりが、活字としてのデザインのキモなのかもしれないと思えた。

そして最後にいよいよ今回制作された文麗仮名の下図に墨入れ作業を実演して下さった。

文字の墨入れ実演。事前に用意しておいた鉛筆の下書きに、小さな溝引き定規と筆で墨入れしていく。直線がほとんどない仮名では、描く場所が常に正面に来るように、紙を送るようにクルクルと回しながら少しづつ描いていく。これは写研でのスタイルだそうで、鳥海さんは逆に直線を溝引きするのが難しいそうだ。ちなみに筆は金華堂品印で「皆さんのお給料ではちょっと買えない…。800円くらいかな(笑)」だそうで「溝引きは鳥海さんの授業を受ける学生はもらえる」らしい。欲しい!

左:溝引き。曲線しかない仮名を見事に5〜6分ほどで描く。描く最中も参加者からの質問に答えながら作業していて、「(林家)正楽さんの紙切りみたいに寄席でお題をもらって文字を書いてみようかな」だって。右:外形線を描いた後、中を塗りつぶして行く。映像を撮影したが、手ぶれが激しく、お見せできるものにならなかった。残念。字游工房社サイトにきれいに撮影された動画がアップされています。

前後半併せて2時間半ビッチリとメッセージの詰まった講演会だった。作り手としてのデザインの取り組み方を聞くことができたのと同時に、使い手の目の重要性も気づかされる話がたくさんあった。カタチだけにとらわれやすい書体選びも、字間や大きさなども大きな要素で、使い方一つで見やすくもなり見づらくもなる。UD書体を使えば自然と見やすくなるのではなく、常に見極める力が大切だなと感じた講演会だった。


左上:キャップス オリジナル仮名書体見本帳表紙。表紙デザインは平野甲賀氏。右上:文麗仮名。下図段階であった「あ」上部の筆脈は最終段階ではなくなっている。左下:文麗。右下:蒼穹。いずれも漢字は文字セットの関係から筑紫明朝Lと組合わせることを想定されている。

早速帰りに「おくりびと」をレンタルして見てみた。講演で紹介されていたように雪をたたえた美しい鳥海山と麓に広がる水田で餌を探す白鳥。故郷に戻った主人公とともに東京から越して来た妻が「お水が違うせいか、ご飯もおいしく炊ける」と言う。おいしい水とおいしい米。そして美しい風景。ここで育った鳥海さんは、このおいしい米や美しい風景に接してたことが、あの表情豊かに映る文字を生み出すことに影響しているのだろうか。今度お会いしたら伺ってみたい。

鳥海氏関連記事:洛北文字講義
字游工房関連記事:文字モジトークショー01「片岡朗×岡澤慶秀」

日本・ベルギー レターアーツ展 Line and Spirit

木曜日, 7月 2nd, 2009

16時45分。みなとみらい線馬車道駅。ジャパン・レターアーツ・フォーラム(J-LAF)主催の「日本・ベルギーレターアーツ展 Line and Spirit」を見に横浜のBankART Studio NYKに向かう。展覧会の案内はかなり前から頂いており、公募形式で作品が募集され、そこに日本人招待作家とベルギーアーティスト13名を加えて展示するという趣向にもとても興味があった。

会場に入ってまず驚いたのが展示会場の大きさ。てっきり一般的なギャラリースペースを思い浮かべていたが、美術館の一室ぐらいはある大きな空間だ。作品数も多く大きな作品もたくさんあったが、広い空間にゆったりと並べられ、迫力のある会場になっていた。

案内をカリグラファーから頂いていたので少し勘違いしていたが、この展覧会はカリグラフィーだけの展覧会ではなく、レターアートの展覧会になっている。コンテンポラリーなカリグラフィーを中心にしながらも、欧文だけでなく和文もあり、書道やレターカッティング、タイポグラフィ、フォントと、文字をテーマに多様な表現方法でアートの領域まで発展させた作品展だ。文字を一つ一つ紡ぎ上げるように繊細に書かれたものもあれば、勢いのある奔放な書風でテクスチャと文字が同化した抽象絵画のような作品まで、いろいろなスタイルの作品を楽しむことができ、それぞれの作品が放つ力にとても強い印象を受けた。国内外問わずこれほどの規模で文字をテーマにしたアート作品が集められた展覧会を見るのは初めてだ。


会場を一通り見終えた後、J-LAF代表の三戸(さんど)さんにお話を伺った。三戸さんはカリグラファーとして活躍しながら教室を運営し指導にも積極的に取り組まれている。今回この展覧会を開催するに至った経緯や、日本でのカリグラフィーの普及やレターアートという芸術にまで発展させ発信するJ-LAFの活動についてお伺いした。日本ではカリグラフィーと言うとまだまだお稽古ごととして捉えられたり、結婚式のウエルカムボードなどが連想されてしまうことが多いそうだが、決してそこにとどまるのではなく、カリグラフィーの表現力の幅広さやアートとしての可能性をもっと広く深く知ってもらいたいという思いが、J-LAFという団体の設立につながったそうだ。

三戸さんをはじめJ-LAFに参加している作家の中には、海外で活躍するカリグラファーを日本に招いてワークショップを開催したり、海外のワークショップにも出かけ交流を持っている方が多いことは知っていた。この展覧会も、もともとベルギーで開催された日本人作家によるカリグラフィー展が現地で好評だったことがきっかけになったそうで、公募形式という企画も加え、より発展した交流展として開催されたとのこと。海外との交流については、海外のカリグラファーからは学ぶことが多いそうだが、日本のカリグラフィー作品も海外では評価が高くなってきているそうで、独特のセンスや書道を取り入れたような作風が海外作家の刺激になっているそうだ。それを証明するように、今回の入選作家の中には多くの素晴らしいカリグラファーが存在し、海外でもプロとして活躍する方までいるそうで、層の厚い作家がいることを知ることができた。

オープニングパーティーにはたくさんの来場者があり、関心の高さがうかがえた。

グランプリ受賞者の橋口さんや入選者の白谷さん、深谷さんにもそれぞれ作品についてお話をお伺いした。グランプリ作品は童話作家のOscar Wildeの「The Nightingale and the Rose」を透明感のあるイタリックと挿絵で本にまとめられた作品。思わず息をのむような美しい作品で、やさしくて余白が美しい静的な印象の紙面だが、全ページに渡って綴られた一貫したスタイルは、芯が通っていて力強い印象を受けた。白谷さんはシェークスピアの言葉を題材にした躍動感あふれるカリグラフィーで、筆で描いたとは思えない線の流れが力強く、感情が真正面にぶつけられたような緊張感を感じた。深谷さんは、オルフェウスの悲劇を題材にしつつも重たいイメージにならないように心がけたそうで、誠実さと気品さがただようシンプルな構成によって、物語のはかなさを感じる素敵な作品だった。

皆さん作品の制作についてだけでなくテーマ内容の解説もしてくださり、内容あっての書体の選択とレイアウトであり、アートと聞くと感情の趣くままなのかと言えば決してそうではなく、デザインに近いアプローチのように思えた。お三方ともイギリスで研鑽を積まれ、橋口さんは現在もイギリスで、白谷さんと深谷さんは帰国しカリグラファーとして活動している。そして世代的にもほぼ同じで、同世代のカリグラファーがたくさんいるということはとてもうらやましい。

その他うれしかったのが海外招待作家の中にElmo Van Slingerland氏の作品を見つけたこと。氏はタイプデザイナーとしても活躍しており、Dutch Type Libraryから、DTL Dorianという書体を出している。海外で買ったカリグラフィーの作品集で偶然見つけ、氏がカリグラファーでもあったことを知った時はとても驚いた。DTL Dorianとはまったく違う奔放な書風と、勢いを出しながらも品のある作品がとても印象に残っていた。出展作品のうち、背筋の通り堂々としたローマンキャピタルにコンテンポラリーなスタイルを組み合わせた作品は、タイプデザイナーらしいというか、Dorianのデザインに通じるようなしっかりとしたプロポーションと線で書かれている。その横には同じ作家とは思えないような奔放な書風のものもあり、幅広い表現力を見ることができた。

左:左壁面に並ぶSlingerland氏の作品。三戸氏によるとSlingerland氏は間際まで作品が送られて来なかったそうだが、結局計10点も送ってくれたそうで、そのうちの6点を展示したとのこと。 Slingerland氏の作品は人気が高いそうだが、最近はデザイナーとしての活動が多く、カリグラファーとしての活動が以前よりも減ったそうで、これだけたくさんの作品が一度に見られることは滅多に無いそうだ。右:右壁面奥2点もSlingerland氏の作品。

日本のコンテンポラリーカリグラフィー、レターアートとしての活動を知ったのはここ数年のことだが、一つ一つの活動が次につながり徐々に大きくなっていることが分かり、しっかりと形を残しながら発展していると感じる。非営利団体として運営するご苦労もあるそうだが、これまでの地道な活動が実を結び、今回の展覧会によってレターアートの認知度がさらに高まるのではないかと思う。

普段パッケージデザインの仕事をする上で、カリグラフィーが活躍できる機会ををいつもうかがっている。商品によってはカリグラフィックなロゴは、フォントには出せないシズル感や品質感を演出できることがあり、クライアントの期待も大きいと感じるようになっている。パッケージデザイナーにも日本にもこれだけ多くのカリグラファーがいることを知っていただき、新たなつながりが生まれてカリグラフィーがデザイン分野でも活躍できるようになることも期待したい。

会期は2009年7月14日まで。お見逃しなく。

左:展覧会リーフレットとDM。Line and SpiritのカリグラフィーはYves Leterm氏。右:展覧会の図録。題字はグランプリ受賞者の橋口恵美子氏。

トークショー『資生堂・サントリーの商品デザインを語る』

日曜日, 5月 31st, 2009

13時46分上野公園。雨の降り出しそうな中、東京芸大へ資生堂・サントリーの商品デザイン展、トークショーに向かう。

30分前には入ったのに大きめの講堂は既に満席となっていて、やむなく通路で立つことにした。東京芸大での開催とあって学生が多かったのかもしれないが、資生堂、サントリーが語る商品デザインというものが注目されていることがうかがえた。

この展覧会の発端の紹介から始まったトークショーは、両社の熱い思いが込められた充実した内容のもので、展覧会の経緯やデザインに対する取り組み、なかなか知ることができないインハウスデザイナーの実態や組織構成まで紹介され、予定された1時間半を遥かに超えて2時間以上にも及んだ。展覧会の準備は既に一年以上前から始まったそうで、展覧会のタイトル一つをとっても、どちらの社名が先か、パッケージデザインではなく商品デザインとした理由も紹介され、企画の全てにわたって綿密に議論されたそうだ。両社内の稟議の様子や、両者の思惑、展示商品の選定など、お互いが相手の出方をうかがいながらも、思わず笑ってしまう意地の張り合いのような話も飛び出し、企画の最中から熱い火花が散らされていたことが分かった。展覧会のタイトルには「vs.」という文字こそ書かれていないが、まさに「対決」と言っても良いような、異業態でありながらデザインに対する取り組みにおいてはライバル企業として互いに意識していることが感じられた。

もうひとつおもしろかったことは、関西と関東のぶつかり合いとも思えたこと。サントリーからは、関西出身の企業、商人であるという自負がうかがえ、「やってみなはれ」に代表されるように、関西弁の中に含まれる絶妙なニュアンスが会社の核となっているようにも感じられる。サントリーデザイン部長加藤氏が商品づくりの要素として話すように、おもしろさではなく「おもろさ」が活き活きと商品にデザインとして落とし込まれているし、このトークショーでさえ、エピソードそれぞれに何か一つ笑いを持ってこなければ気が済まないような「質:たち」「サービス精神」が会社の活力となっているようにも思えた。

一方資生堂は東京・銀座が発祥という品格やプライドのようなものが感じられ、そういった社風や精神が洗練された美意識やデザインに現れているように思えた。逆に言えば資生堂のその姿勢が、今の銀座のありようを作ったとも考えることができる。展示では、資生堂、サントリーが交互に並べられ、一見どちらのものか分からないほどデザインの共通項を感じるものもあるが、実は根底には異なる精神、社風が流れていて、そこには関西、関東というよりそれぞれの発祥の地、大阪、銀座が凝縮されているのかもしれない。

両社が違った気質を見せる中で、一つ大きな共通項と言えば、どちらの企業も西洋文化を日本に取り込み、生活に定着させ、文化にまで発展させ、さらにデザインにおいては「日本:JAPAN」を世界に発信している企業だと思うこと。デザインでのライバル意識がパッケージデザインにおいても日本を代表する企業にまでになった要因なのではないかと思う。

奇しくもどちらの企業も、書体についてもこだわりを持つ企業である。資生堂は資生堂書体を、サントリーはコーポレートフォントを持つ。資生堂は、パッケージに広告にと資生堂書体を用いて、ブランドイメージの構築に活用しているし、サントリーはコーポレートフォントがブランドツールとして会社外だけでなく会社内の意思統一や連携に貢献していると聞く。今回は商品デザインという切り口で行われた展覧会だったが、きっと両社とも「文字・ロゴ・書体」という切り口でもとても魅力的な発表ができる企業なのではないかと思う。

左:東京芸術大学美術館陳列館前。 右:展覧会リーフレット(裏面)と図録。誰が関わったかを明確にするためにデザイナーをクレジットした資生堂と、サントリーという企業を見てもらいたいということでクレジットしなかったサントリー。ここでも企業の姿勢が分かれる。10年ほど前にロゴでサントリー社に関わらせてもらったものが掲載されていた。長い歴史の中に一つでも関わることができたものがあるのはうれしい。

TDC DAY 2009

日曜日, 4月 5th, 2009

地下鉄丸ノ内線東高円寺駅12時22分。地下鉄の駅から女子美術大学杉並キャンパスまでは少し距離がある。開始に間に合うかと時計を見ながら急いで会場に向かった。

『TDC DAY 2009』と題されたデザインフォーラムは東京TDC賞の受賞者やゲストが自身の受賞作品や、近況について語るイベント。一番聞きたかったタイプデザイン賞の受賞者Emanuela Conidi(エマヌエラ・コニディ)氏は、昨年のFernando De Mello Vargas氏に引き続き、イギリスReading大学タイプデザインコース出身のデザイナーだった。Reading大学のタイプデザインコースは今年のNY TDCでもConidi氏の同級生であるDan Raynolds氏が入選し、多くの優秀な書体デザイナーを輩出する。TypeCon Seattleで知り合ったEben Sorkinさんが現在Reading大学で学んでいるが、彼のメールによると、ラテンアルファベットと、ノンラテンを同時に制作することが必須だそうで、それが幅広いアイデアと、ユニークなデザインが生み出される要因なのかもしれない。なかには日本語を選択しようとしている学生もいるらしくEbenさんから相談を持ちかけられたこともあったが、その後どうなっただろう。

左:gggで開催されたTDC展のフライヤー。右:フライヤー裏面に掲載されたタイプデザイン賞「Nabil」。

会場では学校の風景や制作の様子、スケッチ、書体見本を元に受賞作「Nabil」の解説が行われた。Nabilはラテンアルファベットとアラビックがペアになっている新聞用を想定して作られたフォントだそうだ。19世紀の本文用書体に影響を受けていて、ローマンは縦方向の印象が強く、しっかりとしたセリフと、高いコントラストを持ったデザインが特徴でイタリックはより尖ったフォルムが印象的で、インクトラップ(切り欠き)をローマンより大きく取り、それがデザインの特徴にもなっている。新聞用ということもあって、xハイトは大きく、アセンダ、ディセンダは短く設定され、キャップハイトはアセンダーよりもしっかり低く設定し、小さなサイズでもしっかりと大文字を拾うことができ、結果的にドイツ語などの大文字の頻度が高い言語でも読みやすいように設計されている。

アラビックでは、いろいろなスタイルを学びしながら、最終的にNaskhと言われるスタイルがヒントになったそうだ。Conidi氏はアラビア語は読めなかったそうだが、書く練習を重ねてペンの動きがどうなり、それがどのように文字の形に落とし込まれるかを研究して制作したと説明した。大学のアラビックの蔵書を参考にして、自分でペンを作って実際に書く練習をして、文字の形を学ぶことからはじめたそうで、時にはブリティッシュライブラリーやセントブライドライブラリーまで出かけ、コーランの写本やアラビックの書物を見て研究したそうだ。アラビックでは文字が単独で使われる場合と、先頭か、最後に来るかでも形が変わるため、一つ一つの変化を調べる必要があったそうだ。

また、もはやあたりまえとなったOpenType機能をフルに生かし、多言語に対応する発音記号(大文字用、小文字用を備える)、様々なリガチャやオルタネートキャラクタを備えて、幅広い組版に対応できるようになっている。

Reading大学サイトからダウンロードできる「Nabil」のPDF Specimen Bookをプリントしたもの。コンセプトから組見本までしっかり掲載され、TDC DAYのプレゼンテーションでもこの見本帳を基に紹介された。Readingのカリキュラムではこの書体制作以外に論文が必要となるそうだ。

その他、孫 浚良氏のユニークなプレゼンテーションや、 中村至男氏、 中村勇吾氏のW中村によるセッショントークなど、半日さまざまな文字に絡む話を楽しむことができた。

BRODY@ggg & Rocket

水曜日, 2月 11th, 2009

2月2日18時21分数寄屋橋交差点。Neville Brodyのトークショーを聞きにgggギャラリーに向かう。Neville Brodyと言うだけで年齢が分かるかもしれないというぐらい、学生時代は時の人だった。Fontographerで作った文字を駆使してグラフィックを生み出し、「フォント」という言葉をクローズアップさせ、間違いなく文字に興味を持つきっかけとなったうちの一人。

左:学生時代に買った『The Graphic Language of Neville Brody』。手頃な価格で手に入れることができた作品集。右:ggg主催のトークショーのフライヤー

想像していたよりも若い世代が集まった会場に入って来たBrody氏は、少し時の経過を感じさせるが、眼光の鋭い感じは健在。でも、「眠たくないか?寝てるんじゃないのか?」と聞いたり、しんと静まった会場で携帯電話が鳴ったかと思えば、陽気に「Hello?」と電話に応えてしまうユーモアでも観客をひきつけてくれる。

スライドで紹介される作品は、一瞬落ち着いた感じに見えたが、やはり文字の魅力や見せ方を熟知していて、大胆さがより洗練された感じがした。これまでのように要素にあえて動きをつけて生み出す躍動感とは違い、写真と文字との対比や、フォントウエイトのコントラストや文字のエレメントを大きく扱いビジュアルイメージとして展開するなど、ストレートな表現が多く見ることができた。Times紙のリニューアルプロジェクトなどは、強いロゴや見出しと明快なレイアウトで、それらの傾向が集約されたプロジェクトに思えてとてもおもしろかった。(なんと言っても読ませるための新聞という媒体にBrodyが取り組んだというのがうれしい!)

また、作品の中からは特にパッケージやエディトリアルといった作品を多く紹介し、AD&Dアニュアルに代表されるようなリアルなもの、手で触れることができる工夫、仕掛けを取り込んだ作品を、繰り返しphysicalというキーワードで説明していたのが印象的だった。ポスターをはじめとする平面作品が多い印象があったが、これまで平面の中で展開されていた立体的な表現が、徐々にパッケージやエディトリアルなど、リアルな世界に結実した感じがした。

後日、Rocketで行われていたNevil Brodyのギャラリー「Brody@Rocket」のにも出かけてみた。プレゼンテーションで紹介されたようなエディトリアルやパッケージの作品はなく、ポスター作品のみの構成となっていたのが少し残念だったが、これまでの作品を一覧できる展示となっていた。解説によれば、人気を博したがためにイギリスでは活動の場を失い、日本をはじめ海外での活動が主になったようだが、今回の滞在でも日本企業でプレゼンテーションが行われたようで、まだまだいろいろな活動が展開されそうな気配だ。

左:Brody@Rocket会場の表参道Rocket。2009年1月31日から2月10日までポスター展が行われた。右:Brody@Rocketのフライヤー。

関連:Typo Berlinでのプレゼンテーションの様子
Neville Brody – Where’s The Beef?

Neville Brody: role/play

(さらに…)

「世田谷で見かけた書体」展とトークイベント

日曜日, 1月 18th, 2009

 —タイプハンターは一瞬で文字を捕らえる。発達した嗅覚ならぬ「字覚」は街に潜む様々な文字を見逃さない。一度狙いを付けたら文字の裏の裏まで、果ては文字を掲げる店の中まで入り込み味わい尽くす。—

14時45分東急田園都市線三軒茶屋駅。「世田谷で見かけた書体」展と作者の竹下直幸さんのトークイベントを見るために、世田谷文化生活情報センター「生活工房」に向かう。書体デザイナーである竹下直幸さんは、ご自身の書体のみでなく、街で見かけた文字を書体名とともに一つ一つ解説したブログが注目された方だ。『街で見かけた書体』と題されたブログは、書体デザイナーとしての職業柄あらゆる書体に精通した竹下さんが、独自の視点で街角の文字を捉え、ユーモアのあるコメントが添えられた、更新をいつも楽しみにしていたブログだった。2006年の一年間限定だったブログが休止した以後も、引き続きいろいろな街に繰り出し見かけた書体を、雑誌やトークショーで紹介されている。今回、世田谷区に地域を限定し、その中で見かけた書体を展覧会としてまとめ、その活動の詳細をトークイベントで紹介してくださった。

この企画は、生活工房でキュレーションを努める長谷川さんが竹下さんのブログに注目し、生活工房のある世田谷区を取り上げて欲しいと打診をしたのが発端だそうだ。この企画のために、すでに昨年8月頃から取材は始まり、世田谷区をくまなく巡って撮影された相当数の写真から厳選され展覧会として構成された。併せて展覧会が始まる前の昨年末から、「世田谷で見かけた書体」と題してかつてのようにブログも展開されて、企画を盛り上げていた。

トークイベントは2部構成で、前半は、看板、商店街、道路、公共、鉄道といった分野に括って紹介され、後半は番外編として竹下さんが特に気になったものが紹介された。商店街の看板から、広告、標識、果ては地面に埋め込まれた「道界」と呼ばれるものまで、街に何気なく存在する書体も、竹下さんのフィルターにかかれば急に活き活きして見えてくる。竹下さんが特に注目したという街角に設置されている「消火器」に表記された文字についての話を聞くと、大げさなではなく、防災に対する行政の姿勢、取り組みまでが見えてくる気がした。

△左:竹下直幸氏。右:取材中に使われた世田谷区の地図を紹介する長谷川氏。酷使されボロボロになってしまったそうだ。

番外編では、より竹下さんならではの視点で気になったことが取り上げられ、特定のモノに注目したり、書体ではないロゴや、時には脱線して探索中に食べた世田谷のうまいものまでに話が及んだ。その脱線が独自の視点につながり、真正面に見ていては見えないことも浮き彫りになってしまう。事前の調査無く街を練り歩き、本能にまかせて文字を嗅ぎ付けるように行動する様子は、冒頭に書いたように、まさに文字を捕らえるハンターをイメージさせるのだ。看板が気になったお店は中に入って食事もしてしまうが、うまいものを紹介するだけでなく、看板の文字とその店の料理が関連づけられて、あーなるほどと思えてくる。文字を探し求めるだけでどんどん街の姿が見えてくるのがとても面白かった。

質疑応答で、世田谷という限定の地域を巡ることで、他の地域との違いや世田谷ならではの特徴がありましたかと質問してみたところ、そういう特徴が浮き出てくることを期待していたが、書体の使い方や傾向などは残念ながら特になかったそうだ。ただ、行政の看板の設置の仕方や表記には隣接する区で違いが見えたり、他の地域に住む人だからこそ気がつくこともあったという。

△左:展覧会場。右:展覧会DMとトークショーで配られた展覧会用特製チロルチョコ。世田谷区の道界がモチーフになっている。

この展覧会で世田谷を取り上げたことで、他の22区への展開を期待する声もあるそうだ。とはいえ、この世田谷を巡るだけでも相当な奮闘ぶりが伺え、さりげなく紹介してくださる裏には、決して「たまたま見かけた」ということでは収まらない行動力が想像でき、簡単にいろんなところでできるものではなさそうだ。他の22区もという期待は欲張り過ぎとして、またどこかの地域で竹下さんが見かけた書体を紹介していただける機会を楽しみにしたい。

展覧会は世田谷区三軒茶屋の世田谷文化生活情報センター 生活工房ギャラリーにて2009年2月1日まで開催されています。

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もんじゃってなんじゃ?

水曜日, 11月 5th, 2008

12時48分地下鉄銀座線浅草駅。もんじゃ焼きでも食べてみるか。上野に用事があり、せっかく食べるならちょっと浅草まで足を伸ばすかとやってきた。いろいろな制服の修学旅行生の間を抜け、雷門をくぐり浅草寺近くの「ひょうたん」という店に行く。昼も過ぎたがテレビでも取り上げられたこともあってか、店の前には10人近くが並んでいたので、順番待ちの名前を書いて待つことにした。関西出身の自分にとって、正直お好み焼き、たこ焼きを差し置いてまでして、わざわざもんじゃ焼きを食べようとは思っていなかったが、東京に出て3年、まぁ一度くらいは程度に思っていた。


△ご存知浅草雷門(上)。どどーん(左下)。浅草「ひょうたん」(右下)

ところが、長い順番待ちをしつつ、何気なく目に入ったメニュー横の『もんじゃ焼きの由来』という説明書きに、『もんじゃ焼きの呼び名は生地がゆるく、鉄板の上に“文字”を書いて遊んだことから「文字焼き(もんじやき)」となり…』と書いてあるのを見た途端に一気にテンションが変わる。長く待たせられたイライラも吹き飛び、まだかまだかと中を気にして覗き込む。店員に呼ばれるが先に店の中に入りテーブルに着いた。ここはシンプルにベーシックな「江戸もんじゃ」を注文。すぐに持ってきてくれた具が入った器を持って、テーブルに置かれたもんじゃ焼きの作り方を読みながら具を鉄板に流し込む。鋳造の開始だ。具で円形の土手(母型?)を作りゆるゆるの汁を真ん中に流し込んだ。やはり初めての経験なので勝手がわからず、となりの席の様子をうかがいながら汁と具を混ぜ合わせる。だんだん粘りが出て来たところでいよいよ文字の鋳込みの開始だ。もちろん迷わず「文」をコテで書いてみる。こんなお行儀の悪いことをして大丈夫かと思いつつも、何度か試してみるが、なかなか形がうまくとどまらない。他の文字も試してみたが、形をとどめておこうとするのは難しい。書いても書いてもすぐに文字は消えて行く。波打ち際の砂浜に、書いては消える文字が…と言えばロマンチックかもしれないが、もんじゃ焼きの生地にそういうムードは持ち合わせない。なんとかベストショットをカメラに収めて、鋳造したてのもんじゃ焼きを口に運んだ。



△材料(左上)。具材で土手を作り(右上)。汁を流し込む(中央左)。リズムよく混ぜて(中央右)。これがまさしく「もんじゃ焼き」

うまいな。味はしっかりしているし、ビールが欲しくなる。次に予定が控えていたのであきらめたが、夏場にビールでやるというのもうなづける。猫舌も心配したが、思ったよりもパクつくことが出来た。お好み焼きやたこ焼きとは全く別の食べ物だ。やっぱり食事としてというよりは、ビールのアテかおやつにしかならないかなぁとは思うものの、文字を書きながらチビチビつついて文字の話をしてみるのも良いもんだなと思った。浮かんだタイトルが「もんじゃってなんじゃ?」というベタ路線では、大した話も出来ないと思うが…。

セミナー「欧文フォント質問箱」

火曜日, 10月 28th, 2008

地下鉄丸ノ内線中野坂上駅15時33分。前の打ち合わせで遅くなり、会場の東京工業大学に着いたのは始まって40分程経ってから。息を切らしてついた頃は、あらかじめ募集されていた質問への回答が始まるところだった。あとで聞けば、見逃したところは先日京都で聞いた部分とほぼ同じだったようで、なんとか間に合ったようでほっとした。

質問をたくさん聞けてよかった。具体的な話やどういったことに関心があるのかを知ることが出来る。次はいよいよワークショップっていう話もあがったりして、年を経るにつれ文字に対する興味が深まっているんだなと、小林さんの継続的な活動が大きく働いていることを感じた。

アートディレクター両氏のプレゼンテーションも面白かった。文字の遊びは面白いと思うし、崩すからこそ生まれる面白さもあると思う。基本的な約束事や、手書きの自然な形を学ぶのは大切なことだと思うが、それをふまえてもあえて崩したい、演出したいデザインというはあるだろうし、デザインする目的が何かという大きな視点から話すディレクター両氏の明瞭な作品解説が興味深かった。

和欧混植についての話は身が引き締まるし、和文に合いながら欧文単独でも使用されている実例を見ると、あとに続きたい気持ちが強くなる。

講演後、会場で久しぶりに会った方々と夕食。今シーズン初の鍋とおいしいビールを飲んで少々テンション高く喋る。

小林章の欧文タイプ・セミナー 2008「欧文フォント質問箱」ー 参加者がカスタマイズするセミナー ー